完全無添加天然酒「永遠の御輝(日本酒)」発売! www.tawaraya-saketen.co.jp
3つの「完全無添加天然酒」を企画しましたが、その中で一番最初に発案したのが、「永遠の御輝(日本酒)」です。新潟の「伊藤酒造」に話しを持ちかけたのは、平成12年8月でした(平成11年だったかもしれない?)。しかし、あっけなく断られてしまいました。平成13年になってから、他の酒蔵にも依頼しましたが、また断られました。
地酒には学生時代から興味を持っていました。最初は地酒は全て”手造り”だと思っていたのですが、機械化が進んでいたり、オートメーションで造られているものも多くあることを知りました。家業(酒屋)に就いてからは、”手造りの地酒”を揃えるように心がけ、冬季は醸造量1000石/年以下(1石=1升瓶100本)の各地の手造り醸造の蔵元を訪問しました。最初に訪問した蔵元が、「伊藤酒造(新潟県)」です。
又、”無添加”のものに力を入れたいと想い、「純米酒(醸造アルコール無添加の酒)」を多く揃えていました。しかし後に、これでは不十分だということを知ります。
日本酒の醸造では、まず酒母()をつくり、次いで、、蒸米、水をそれぞれ3回に分けて加えていきます(三段仕込み)。酒母()には、速醸系酒母(速醸、その他)と生系酒母(生、山廃)があります。現在、ほとんどの日本酒は、速醸系酒母を使って仕込まれるのですが、人工乳酸が添加されています。速醸の純米酒は、厳密には”無添加”ではないのです。”無添加”の日本酒といえるのは、「伝統醸造技法の”生仕込み”や”山廃仕込み”の純米酒」です(「生」、「山廃」を謳っていながら、人工乳酸を添加しているものもあるらしい?)。しかし、生系酒母(生、山廃)を使った仕込みは、とても手間暇がかかるため、現在少数の酒蔵でしか行われていません(淡麗タイプの日本酒の醸造には、速醸系酒母がよく使われる)。
お酒は、酵母のアルコール発酵によって造られます!酒母()とは、雑菌を淘汰し酵母を増殖させたものです。古くは、蔵付酵母を自然なかたちで酒母()に誘導し増殖させていましたが(自然発酵)、現在は純粋培養酵母を酒母()に添加します。”添加”といっても、酵母は微生物であって、薬品を添加している訳ではありません。しかし、酵母は種類が多く、近年開発された”人工酵母(人工的に変異させた酵母)”を使用したものを”無添加”と言っていいものかどうか−?瓶(容器)のラベルには、”使用酵母”を表示しているものが少ないため、選択が難しいという問題もありす。
以上のような状況を知り、企画したのが「完全無添加天然酒(日本酒)」です。これは、”国内産無農薬(有機)栽培米を100%使用した、人工変異酵母無添加の山廃仕込みによる純米吟醸酒”です。薬品の添加と処理を一切行わない、環境と人に優しい手造り・無添加の酒です!
平成13年6月、醸造を依頼した2つ目の酒蔵にも断られました。その数日後、諦めかけていたとき、当店を訪問したのが伊藤酒造の岡村さんでした(営業で東京方面の取引先を廻っていた)。いろいろな話しをしながら、伊藤社長を説得してもらうよう頼みました。
伊藤酒造は、平成に入って新潟産完全無農薬有機栽培米「山田錦」を100%使用した「日本海 純米吟醸」を発売しています。加茂市の有機栽培農家を説得し、「山田錦」を契約栽培してもらっています(新潟県内で初めて「山田錦」の栽培に成功!)。この酒米を使って、「山廃仕込みを行ってもらいたい。やはり依頼できるのは、有機栽培米を持っている伊藤酒造しかない!」と思い、伊藤社長に電子メールや電話で再び頼みました。それでも、あまり良い返事は戴けません。8月8日、蔵元へ赴き、伊藤社長に相談(金子彦治杜氏にもお願いする)−。「10月に結論を出しましょう」という言葉を戴きました。
伊藤酒造では、速醸で醸造を行っています。それなのに”山廃での醸造”を依頼しているのだから、伊藤社長もさぞ困られたと思います。その上、”純粋培養酵母無添加”の醸造を依頼してるのだから、「何を馬鹿なことを言ってる−」と思われたことでしょう。
古来より、多くの種類の酒が、世界各地で、さまざまな方法で醸造されてきました。その中で日本酒は、最も”繊細”な醸造技術(比較的低い温度での並行複発酵)を必要とします。生系酒母(生、山廃)の仕込みは、さらに高い醸造技術(微生物の遷移による雑菌の淘汰)が必要となります。
10月9日、伊藤社長から「山廃仕込みを実施します(酵母については未だ検討中)」との電子メールが届きました。感激でした!
平成14年1月、新潟産完全無農薬有機栽培米「山田錦」を原料とする山廃仕込みが始まりました(仕込み状況は、蔵元から電子メールで送られてきた)。
今回(13BY)は、協会9号酵母(単離培養酵母)を使用。この酵母は人工酵母ではありません!”純粋培養酵母無添加”だと腐造の危険度が高くなります。
酵母は、高い環境適応能力と増殖能力を持っています。酒蔵の中では様々な酵母(蔵付酵母、醸造に使用している酵母、その他)が生息していて、酒母()の中にも入り込みます。乳酸により強酸性になっている酒母(なっていないとバクテリアが繁殖→腐造)に、純粋培養酵母(単一種)を添加しないと、自然に入り込んだ酵母(多様種)が増殖していきます。この場合、増殖した酵母はどの程度アルコールを生成するのか、又どのような香味成分を生成するのか、把握しきれません。”ほとんどアルコールを生成しないような酵母”が増殖してしまった場合、それは腐造になります。又、アルコールを生成した場合は、酸味の強い酒になりやすいそうです。危険度を低くするためにも、良好な香味の酒を安定的に造るためにも、純粋培養酵母を添加する(単一種の酵母の数で、他を圧倒する)のが常道です。しかしながら、「良い原料米と良い水、良いを使った良い生系酒母(生、山廃)には、良い酵母が自然に入り込み活性化(増殖)する」というのが私見です。危険性は皆無ではありませんが、秘めた可能性は大きいと想います。
生系酒母(生、山廃)を使った日本酒は、味が重く、癖があると感じている人が多いかもしれません。確かに、しっかりとした酒質に仕上がりますが(長期熟成にも耐えられる!)、出来の良いものは、癖がなく調和のとれた味わいです。ここに、匠の技(高度な醸造技術−伝統的な日本酒醸造の基本は「一、二、三造り」です)があります!
日本酒は、冷暗所(低温、10度以下、または氷温)で管理すると、ワインと同じように熟成による香味の変化(向上)を楽しむことができます!長期熟成に向く酒質のポイントは、”高アルコール”、”高エキス(酸、etc.)”などです。
最近は、新しい酵母が開発され、香りが高く酸の少ない酒が醸造されるようになりました。このような酒は現代の嗜好には合いますが、早飲みタイプのお酒であって、長期熟成にはあまり向かないようです。
原料米では、近年改良された品種より、「山田錦」などの古い品種や、「亀の尾」、「雄町」、「強力」、「神力」など日本在来品種(晩生の品種)を使ったものの方が、長期熟成に向くようです。
平成14年3月18日、上槽が行われました(仕込み日数30日、醪日数38日。とても長い時間をかけて丁寧に造られています!)。
3月27日に試飲−。華やかではないが良好な香り。ほど良い酸味を持ち綺麗な酒質ですが、山廃仕込みらしいコシの強いコクと深い味わいを持っています。キレの良さは抜群です!とても良い出来です!!伊藤社長、金子杜氏を始めとする蔵人の情熱を観じました。原料米と醸造技法にこだわって酒造りを続けている「伊藤酒造」と出会えたことに感謝します。
「永遠の御輝」は、清澄剤や濾過剤など一切使用せず、無濾過生原酒のまま瓶詰めし貯蔵します。低温で管理することにより、さらなる味の向上が期待できます。
環境と人に優しい日本酒!匠の技と魂の結晶「永遠の御輝」を、末永く御愛飲下さい。
(*)原料米は、有機JAS、JONA認証取得の圃場で収穫!
永遠の御輝 製品ラベル
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